崩れかけた壁。薄暗闇の回廊。
時折耳に触れるのは、地響きという崩壊の足音。
そして回廊に響く、2人分の足音。
「月瑠!前!」
物思いに沈んでいた私は雫の声で我に返る。
視界の先で睨みを利かせるボーマンダに鉄のトゲを放ち、近づいてすかさず“目覚ましビンタ”。私の倍はある巨体が、唸り声を上げて沈む。
「お見事‥‥っと!」
背後から忍び寄るドータクンに“渦潮”が命中。私達はどちらからともなく微笑みあった。
迫り来る敵を順調に倒しながら進むダンジョン。
ここは――「時空の塔 最上部」。
時の歯車を収める為に。
それによって、星の停止をくい止める為に。
私達、探検隊ドロップスはひたすら進む。
普段とは桁違いの緊張感――
しかし私は、いつもに増して饒舌だ。
「ねぇ雫」
「ん?なに、月瑠」
階段を上る度に。
敵を倒す度に。
振り返って話しかける。
この世界で出会った、一番のパートナーに。
「どうしたの月瑠。いつもよりお喋りだね」
雫は鋭い。
変化というものに、とても敏感。
私ですら感じているのに、キミが気づかないワケないよね。
「やっぱり‥‥月瑠も不安なの?大丈夫。ボクも怖いけど‥‥月瑠の後ろは、ボクが守るよ」
‥‥違うよ。
確かに、不安はある。
ダンジョンを抜けた先で邂逅を果たすだろうディアルガのことを考えると、鳥肌が立ってくる。
でもね、それより‥‥。
雫。これがキミとの、最後の探検だから‥‥。
もっとキミの声が聞きたい。
もっとキミと話したい。
もっとキミと、一緒にいたい‥‥。
この塔の一番上に辿り着いて、時の歯車を無事収めたら‥‥私は消える。
一緒にいられる時間はあと僅か。
だから‥‥。
『一緒に頑張ろうね!』
『少しつらいけどまだまだ平気だよ。』
『月瑠の後ろは任せてね!』
「さぁ、もう一息だよ。行こう、月瑠!」
「うん‥‥ありがとう、雫」
だから、聞かせて。
頼もしいキミの言葉を。
勇気をくれるキミの声を。
この心に、しっかりと刻み込めるように‥‥。
- END -
初!ダンジョン小説です。
僕、ゲームではいろんな人に話しかけるのが好きなんです。
ダンジョン中でも、Yボタン押して仲間に話しかけてます。
時空の塔最上部で話しかけた時に、「ああ、よくよく考えるとこれが最後になるんだな‥‥」って思って。
DS開いたまま急いでケータイにメモってました。
しかし時空の塔、ノーマル&水タイプには結構キツいものがありました‥‥;;
そして試験前なのに、宿題終わってないのに、何ゲームに逃げてんだ自分orz
初出 2008.1.