あなたといる幸せ




 髪を乱す冷たい風に僕は思わず目を閉じた。
 橙や薄紅に染まった雲が流れていく。のどかな風景を視界の端に置きながら、開いた地図と睨み合った。
 「アサギシティまではまだあるな‥‥」
 現在地と目的地の距離は地図上で指3本分。夜までにつけるかどうか、怪しくなってきた。
 コーディネーターの僕が目指す街といえば、いわずもがなコンテストの開かれる場所だ。数日後にコンテストが開かれる街、アサギシティ。大きな灯台のある港町だと、手元の地図には書かれている。
 しかし北風が我が物顔で闊歩するこの季節、海岸や波の音はそれほど魅力的でもない。夏なら少しは心躍るんだろうけど‥‥今は冬真っ盛り、春に焦がれる2月だ。
 「‥‥‥‥!?」
 ふと地図から顔を上げて、そのまま取り落としそうになった。
 ざわめく風のせいではなく、視界に入ってきたもののせいで。
 行く道の少し先に現れた、一人の少女。
 見慣れた服に、見慣れたバンダナ。そして特徴的な髪型。
 これまでに何度思い描いたか知れない、ハルカの姿――ただ、その服もバンダナも、冬の海のような青色だ。
 あれは‥‥ハルカなのか?顔も服も髪型も、色を除けば何もかもがそっくりな少女。
 「いや‥‥違う」
 姿形は同じだが、僕には分かる。わずかに違う面影と雰囲気、そして‥‥頭の片隅で声を上げる、違和感。
 「ルビー!何しようと?早う来て!」
 声をかけてみようと近づく間に、少女は誰かに呼びかけた。
 草影から現れたのは‥‥紅い瞳の少年。
 「キミが‥‥早すぎる、んだよ‥‥!」
 肩で息をしながら歩いてくる。歩を進める度に、髪なのか帽子なのか分かりづらい白いものがつられて揺れた。
 「あんたのほうが体力なさすぎったい」
 「そうだね。元ターザン少女と比べるのが間違いだったかな」
 見たところ連れのようだが‥‥飛び散り始めた火の粉がこちらに来る前に。
 「ねぇ、君達」
 お互いしか目に入ってないような彼らに、はっきりと話しかける。
 「突然で悪いんだが‥‥僕と、どこかで会ったことあるかい?」
 先に答えたのは少年。
 「いや‥‥ないけど。サファイア、君の知り合い?」
 「あたしも知らん。人違いじゃなかと?」
 サファイア‥‥?
 それが、この少女の名前か。
 安堵と悔しさが同時に胸を満たす。
 目の前の彼女がはるかと双子のように似ていることが、僕の心を軋ませる。
 ハルカとは‥‥まだ、会えないのか。
 「あんたは‥‥誰なん?」
 宝石の名をもつ2人が怪訝そうに眉をひそめた。







 「さ‥‥寒いかも‥‥」
 かもどころじゃなくて、寒すぎっ。
 風はひっきりなしに吹いてるし、今は冬だし。
 この服じゃ限度があるかも。
 殺気見つけたお店で温まったばかりなのに、季節は容赦ない。
 次の街まではどのくらいなの?
 手袋をすっぱり無視してかじかむ指で、地図を取り出す。広げて睨めっこをしても、自分のいる場所もよく分からない。
 こういうのは、いつもタケシがやってくれてたから‥‥私はまだ、慣れてないし。
 「‥‥っと。ダメよハルカ。自分しかいないんだから」
 頼もしい仲間は、もういない。何でも自分でやらなくちゃいけない。
 その覚悟を決めて、私はここに――ジョウトに、来たんだから。
 「あっ!」
 ひときわ強く吹いた風、震える手に握られていた地図がさらわれて空に舞う。
 飛んでいく地図を追いかけるけど、爪先も冷え切ってうまく走れない。
 再び襲う強風に、思わず顔を覆う。
 地図が、なくなっちゃう‥‥!
 走らなきゃ!
 「はい。これ、君の?」
 凍える脚に力を入れて目を開けたとき、差し出されたのは飛んでいったはずの地図。
 「そうです‥‥あ、ありがとうございます!」
 目の前にいたのは、きれいな人だった。
 肩くらいまでの金色の髪に、吸い込まれそうな蒼い両目。とっても優しそうな笑顔。
 「いや、拾ったのはオレじゃないんだよねー」
 そういってその人は後ろを向く。
 視線の先には、黒ずくめの男の人が仁王立ちになっていた。今にもつかみかかってきそうな、コワい顔。夜闇のように黒いマントが、威嚇するようにはためく。
 「あ、あの人は‥‥?」
 「んーっとねー、オレのこいび‥‥」
 「旅の連れだ!」
 黒い人が吠えた。そんなに大声出さなくても聞こえるかもっ。
 「連れ‥‥?」
 「まぁそうなんだけどー。ねぇ君」
 きれいなその人は困ったように笑って、こっちを向いた。
 「アサギっていう街がどの辺にあるか、知らないかなぁ?」







 「じゃあ、あんたもコンテストに出とうと?」
 訝しみの色が消えた瞳が尋ねてくる。
 僕がコーディネーターだと名乗ると、彼女は興味を示してきた。
 「そうだよ。次の街にもそのために向かってるんだ」
 「ふーん。こん人もコンテストに出とうとよ」
 そう言って指さすのはルビーという少年。
 「サファイアはボクとあったばかりの頃、コンテストのこと散々バカにしてたんだよ。どうだいサファイア。ボク以外にもいるだろ、ポケモンの美しさに目覚めた人が」
 「あんたはやりすぎったい。なんね、いつもカメラ持ってパシャパシャやって。そげんあったら笑いたくもなるったい」
 「君には分からないよ。気高い心があってこそ、美しさを理解できるんだから」
 ‥‥この2人、さっきからこの調子だ‥‥。
 話していると自然と2人の言い合いになってしまう。僕が口をはさむまで延々続いて‥‥よく飽きないなぁ。「喧嘩するほど仲がいい」というのは、彼らのためにある言葉なんかも知れない。
 言い争ってると言っても、本当に互いを傷つけたりはしてないように見えるから。
 「君達は、どこに向かってるんだい?」
 苦笑気味に尋ねると、未だ冷静なルビーが答えた。サファイアは今にも牙をむきそうな形相だ。
 「キミと同じ、アサギシティさ。コンテスト会場もあるけど、あそこは灯台が有名だろ」
 港町に灯台があるのは普通だが、アサギの灯台の光はポケモンのものらしい。その珍しさに灯台を訪れる観光客も多いとか。
 「あの灯台から見る『マリンスター』は格別らしくてね。つくころにはもう夜だろうから、すぐに行こうと思ってるんだ」
 マリンスター?
 マリンスノーの間違いじゃないのか?
 「ルビー、さっきから言いようその『マリンスター』って何なん?」
 「秘密。当ててみても良いよ?キミには無理だと思うけどね」
 ルビーが茶化す。サファイアが言い返す。もう幾度目か、数えるのは結構前に諦めた。
 「僕も気になるな、それ。観光名所なのかい?」
 答えの代わりに、悪戯っぽいウインクが一つ。
 「シュウも見てみるといいよ。海岸からもよく見えるから、そっちにね」
 マリンスター‥‥「海の星」か。こっちではヒトデマンが有名なのか?僕を海岸に行かせようとしてるあたり、彼にも何か考えがあるようだけど。
 しかし悪い気はしない。星というからには、きっと美しいものなのだろう。
 「ハルカと一緒に、見たかったな‥‥」
 新しい地に来て、彼女とはまだ一度も会ってない。コンテスト会場にはできるだけ足を運んでいるが、どうやらすれ違ってばかりのようだ。ハーリーさんやサオリさんとはよく合うのに‥‥。
 「ハルカっち、誰?」
 耳ざといのか、サファイアはこの呟きに気づいた。
 「僕と同じ、コーディネーターさ。彼女も旅をしてて‥‥僕のライバルで‥‥」
 僕の、特別なひと。
 アサギに向かっているのは勿論コンテストに出るからだけど。
 ハルカに会えるかもしれないという淡い希望も、ある。
 用意したバラが無駄にならないことを願いながら。
 「キミの大切な人なの?ただのライバルじゃないよね」
 見透かしたようにルビーが言う。
 「どうして?」
 「分かるったい。そん人の話するとき、あんた優しそうな顔になるけ」
 張ったりではなく、本当に見透かされていた。誰にも明かしてないはずの想いは、こうも分かり易く顔色に出てしまうものだったのか。
 「‥‥そういう君達こそ、仲が良さそうだね」
 友情という意味ではなく。
 「まさか。ボクが美しさを理解できない人と分かり合えるとでも?」
 「よけいなお世話ったい!」
 また始まった‥‥本当に懲りないなぁ、この2人。
 素直になれないのはお互い様だね。
 終わりそうにない喧嘩をBGMにして、空を仰ぐ。陽が落ちた景色に、一筋の光が射していた。あれが、灯台の明かり。
 アサギシティまで、もうすぐだ。







 「へー、ハルカちゃんっていうんだ。カワイイ名前だね」
 日向ぼっこしてるみたいに笑うのはファイさん。
 「会ったばっかの奴にナンパかよ」
 目つきが鋭くて怒ったように話すのが黒鋼さん。
 ファイさんは私に話しかけてくれるんだけど、黒鋼さんはずっと黙ったまま。ようやく口を開いたと思ったら、ファイさんの揚げ足を取ってばっかりだし。
 「ん?黒りんもしかして妬いてるの?」
 「違ぇよ」
 「大丈夫。オレが好きなのは、くろ‥‥」
 「あーあーうっせーな!」
 「あ、黒っち顔赤いー。照れてるんだー」
 「照れてねぇ!おまえもう黙ってろ!」
 ケンカしてばっかだし‥‥。しかもファイさん本気じゃなさそうだし。だからよけい黒鋼さんが怒るのかも。
 「ゴメンねー。怖いかも知れないけど、いっつもあの調子だからー」
 「大丈夫‥‥です」
 そろそろ慣れてきたしね。
 私と同じアサギシティを目指してる2人。こっちに来てからずっと1人だったし、たまには誰かと一緒なのも楽しいかも。
 さっきまでファイさんから聞いた話では、2人とも旅人で、すごく遠いところから来たらしい。ポケモンのことも知らなかったのはビックリした!「この世界ではボールから生き物が出てくるんだねー」って言ってたし。
 「2人で旅をしてるんですか?」
 「ううん。オレと黒様と、小狼君とサクラちゃんとモコナ。あとの3人とはちょっと離れ離れになっちゃってねー。探してるんだけど、街に行けば会えるかなって」
 「こうして話せてるから、そう遠くにはいねぇと思うんだがな」
 黒鋼さんが言ってるコトはピンとこないけど、とりあえず心当たりはあるみたい。
 「ハルカちゃんは、1人?」
 「そう‥‥です」
 ホウエン地方では、サトシにタケシ、マサトと一緒だったけど‥‥ジョウトには、1人で来るって決めた。それでも時々、寂しくなる。せめてこっちに来てるシュウやコーディネーターの人達に会えたらって、思う。コンテストにも2、3回出たのに、まだ誰とも会ってないし‥‥。
 「ここは小娘1人で旅が出来るくらい、平和な世界なんだな」
 「こ、小娘‥‥」
 皮肉のつもり!?悪気はないかもしれないけど、ちょっとムカつくかもっ。
 でも楽しいんだろうなぁ、5人での旅。
 「ところで‥‥ハルカちゃん、それは何?」
 モンスターボールに驚かれたから今度は何だろう‥‥と思ったら、ファイさんが指さしてるのは握ってる包みだった。淡いピンクの地に、パステルカラーのハートマーク。そこまで重くなくて、両手に乗るくらいの大きさ。
 「コレは、そのー‥‥」
 「プレゼント?」
 うーん、正確には違うような。
 コレは、立ち寄ったお店で買ってしまったもの。
 冷たい風が身に沁みる2月中旬、ハートマークの包装紙といえば‥‥もう分かるわよね。
 ハート模様がちらつく度に、胸がズキンとする。
 なんで買っちゃったのかなぁ、チョコレートなんて‥‥アイツに会えるなんて、そんなハズないのに。
 「大切なひとに、贈るのかな」
 「ちっ、違います!ただの義理チョコですっ!」
 全力で否定!本命なワケないかも!
 だってシュウは、ただのライバルだし。
 落ち着いて大人っぽくて頼りになるけど、嫌味なヤツだし
 1番負けたくなくて私の目標だけど、ただのライバルなんだからっ!
 「ねぇ黒ぷー、『ぎりちょこ』って何だろうねー」
 「知るか。あの小娘に訊けよ‥‥って、話しかけても答えそうにねぇな、あの状態じゃ」
 「女の子だからねー。いろいろあるのかなー」
 「それよりおまえ地図見ろ、まだ着かねぇのか」
 「もうすぐだよー。ホラ、あそこに明かりが見えるでしょ?あれ目指してー、すすめー黒わんー!」
 「犬呼ばわりすんじゃねぇ―――!」







 灯台が海と街並を照らす。暗くてもうよく見えないけど、あの船はどこに向かってるのかな。ホウエンに行く船はあるのかな。
 黒鋼さん、ファイさんと別れて、私はアサギシティの灯台の近くにいた。あの2人は他の仲間を探すらしい。
 「寒っ‥‥」
 夏には気持ちいいと思うけど、この時期の潮風はキツすぎるかも‥‥。
 ポケモンセンターで休んでもいいんだけど、先にコンテスト会場に行きたくなった。
 で、さっきから探して歩いてるんだけど‥‥なかなか見つからない。
 もう通り過ぎちゃったとか?
 波の音が、一段と大きく聞こえる。踏みしめる地面が少し柔らかい。歩を進める足が、軽く沈み込む。
 打ち寄せては、引いて行く波。
 「海岸まで来ちゃったのかも‥‥」
 私、そこまで方向オンチじゃないのに。やっぱり先にポケモンセンターに行けば良かったかも。寒くって、そろそろ手が動かなくなりそう。
 回る灯台の明かりに照らされる海。響く船の汽笛。波音に包まれて。
 なんとなく、砂浜に膝を抱えて座り込む。
 海と暗闇が溶け合って、一つの空間になってるみたいだった。
 こうして息をひそめていると、私まで溶けていってしまいそう。

 どうしたんだろう、私。こんなの、らしくないよ。
 辛いの?悲しいの?‥‥‥‥寂しいの?
 一緒に旅する人がいないのが?
 ‥‥‥‥シュウに、会えないのが?

 吹く風から身を守るようにして縮こまると、抱いている紙包みがクシャリと鳴った。

 (‥‥‥‥ハルカ)

 なんだか聞き覚えのある声がする。
 聞き違いよね。波がそう聞こえたのよ。
 疲れてるのかな、やっぱり‥‥。

 「‥‥ハルカ!」

 肩に手を置かれて、思わず体を震わす。
 顔を上げた瞬間、ハート模様の紙袋が小さな音をたてて浜辺に落ちた。
 その声は。

 落ち着いてて、
 大人っぽくて、
 でも嫌味なヤツで、
 私の‥‥‥‥ライバル。

 「シュウ!!」

 「こんな所で‥‥‥‥寒くないのかい?」
 「よ、余計なお世話かも‥‥っ」
 暗くてよく見えないけど、緑の髪に緑の瞳。見慣れた‥‥もう何度思い描いたか分からない姿。
 シュウが、目の前にいる。
 「シュウこそ、なんでこんな所にいるのよっ」
 「僕は‥‥‥‥ん?」
 何かに気づいたのか、言葉を止めてシュウがかがむ。
 どうしたの?
 シュウの視線の先を追ってみると、そこにあったのはハートマークの紙包み。
 私は“しんそく”並の速さでそれを拾い上げた。
 「それは‥‥」
 「な、な、何でもない!何でもないかも!」
 顔が火照っていく。
 見えなかったよね?気づいてないよね?
 シュウに見えないように、紙袋を後ろに隠す。
 さらに言い繕おうとした、そのとき。
 シュウが息を飲む音が聞こえた。海のほうを見て、目を見張っている。
 私も振り返った。

 「なに、あれ‥‥‥‥」

 さっきまで闇一色だった海面が、光に包まれている。
 ううん‥‥何十、何百もの赤や黄色の光の粒に覆われている。
 まるで‥‥まるで、星空をそっくりそのまま海に落としたような。
 星屑を海いっぱいにまぶしたような。
 あまりの光景に、私は言葉を忘れた。
 シュウもようやっと、声を発する。
 「あれは‥‥‥‥」



 「マリンスター‥‥‥‥」
 ルビーが感動に満ちた声を漏らす。
 アサギシティの灯台、最上階。外を見渡せるテラスのような場所に、ルビーとサファイアはいた。
 「あれが、あんたが言いよった‥‥」
 赤に黄色に揺らぐこの世のものとは思えない眺めに、2人は言葉もない。
 「アサギシティ近くの海では、ごくまれにこういう現象が起きるんだ。灯台の光に導かれて集まってきたランターンやヒトデマンたちが、夜いっせいに輝きを放つ――海に降りた星空、マリンスター」
 「あれ全部、ポケモンなん!?」
 見渡す限りの海面を埋め尽くす光。
 美しさとともに、生命の神秘や力強さまでが伝わってくるような光景だった。
 「知らんやった、こげん綺麗なの‥‥」
 「だろ。だから来たんだよ。キミに‥‥‥‥この景色を、見せたくて」
 「ルビー‥‥」

 美しいもの。綺麗なもの。
 良いと思ったものだから。
 それをあなたと、分かち合いたくて。

 「それともうひとつあるんだよ。マリンスターにまつわる言い伝えが」
 「言い伝え‥‥?」



 シュウとハルカから少し離れた海岸。
 黒鋼とファイ、それに小狼、サクラ、モコナの一行もマリンスターに目を奪われていた。
 「きれい‥‥」
 「すごーい、お星様が落ちてきたみたい!」
 「このことだったんですね、街の人々が言っていたのは」
 小狼達は先にアサギに到着していたらしく、情報収集をしながら黒鋼とファイを待っていたようだ。
 「有名なんだねー」
 「ええ。なんでも言い伝えがあるそうです」
 「言い伝え?」
 「はい」

 いわく。
 愛を伝え合う日に幸運にも海の星空を見た恋人たちは、幸せになれる。

 「ありがちな言い伝えですが、興味深いと思いませんか?」
 「そうだねー。ロマンチックだよね」
 愛を伝え合う日。すなわち今のバレンタインデーのことだ。
 異なる世界を旅する彼らは、知る由もないだろう。
 今日がその日だということに。

 「ねぇ黒様。あの子もこれ、見てるのかな」
 「あの子?‥‥‥ああ、あの小娘か」
 「大切なひとに、逢えてるといいね」
 「‥‥他人の事思う前に、自分の事考えろよ」
 「え‥‥?」
 「‥‥‥‥なんでもねぇ」
 大きな手が、ファイの金色の髪をくしゃりと撫でた。



 「ねぇシュウ、これ‥‥」
 マリンスターに釘づけになっているシュウに、ハートマークの紙袋で包んだチョコを渡す。
 「これは‥‥」
 「今日バレンタインデーでしょ。言っとくけど、たまたま余ったからあげるんだからね。あなたのために買ったんじゃないんだから」
 「‥‥‥‥ありがとう」
 フッ、とシュウが笑う。何もかも見透かしてるような、不敵な笑み。
 嫌味だけど。ちょっとムカつくけど。
 でも、それが‥‥
 私の好きな、シュウだから。


 灯台の明かりが光の海に吸い込まれていく。
 闇に浮かんだ、命の輝き。
 こんなに綺麗な景色を好きな人と見られるなんて。

 なんという、幸せ。





- END -





あとがき

 恋人たちの一大イベント、バレンタインデー!
 この機会にいつもと違うコトをやらかしたいなー、と思いましてー‥‥
  やらかしました。クロスオーバーです。
 ウチのサイトで取り扱ってるCP3組ごった混ぜ。
 書き始めたのが2月入ってからで、間に合いそうになくて最後のほうはグダグダになってしまいました‥‥‥‥反省。。
 個人的には、好きなCP複数を一つの作品で書けてすごく楽しかったです(^^)
 メインはシュウハルですが、他2つのCPも僕なりの理想像で話を進めてます。
 ポケモン勢に押されて黒ファイが薄くなりましたが、そこは配慮してのことです。
 でも書き終わってから、あんまりバレンタインぽくないなぁ‥‥とか思ったり。
 時間に余裕を持って書きたかったです‥‥。



初出 2007.2.10.







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