「こんなところで会うなんて、偶然だね」
「こんなところで会うなんて、偶然かも」
2人の再会はいつもこんな一言から始まる。
そんなやり取りも、もう何度目になるのだろう。
最早偶然ではなく、もっと別の言葉が似合うような、そんな再会だった。
所はホウエンから遠く離れたジョウト地方。
大都市・コガネシティから北へ、35番道路を抜けた先。
溢れる緑に恵まれた憩いの広場、自然公園。
沈む夕日に色彩を変えていく空を正面にして、シュウとハルカはベンチに並んで座っていた。
「で、君……その子はどうしたんだい?」
そう言ってシュウが指差すのは、ハルカの肩に乗ったまま離れない若草色の生き物――キャタピーだ。
もそもそと足(らしき部分)を動かしたり、ピンクの触角をぴくぴくさせたりと落ち着かない。
「この子?さっきの虫取り大会で捕まえたんだけど……なかなか離れてくれなくて」
「ふうん……虫取り大会?」
「ええ。でも入賞できなかったし……この子も逃がそうと思ったけど、見ての通りだし」
「逃がす?育てないのかい?」
「だってキャタピーって、進化したらバタフリーになるんでしょ。可愛いけど、シュウとかぶっちゃうじゃない」
確かに、とシュウは頷いた。
彼の手持ちの最後の1匹として加わったのがバタフリーである。パフォーマンスの傾向はアメモースと似たものがあったが、なかなかの活躍を見せていた。
「それにアゲハントもいるし。同じ虫ポケモンだし、そこもかぶっちゃうかなーって」
「そうかもしれないが……それを言ったら、僕のアメモースも立場は変わらないよ。それでも、2匹とも良い働きをしてくれているよ。アゲハントとバタフリーでダブルパフォーマンスをするのも面白いんじゃないかな?」
炎と水というような全く違うものが融合するのもダブルパフォーマンスの面白さだが、似たものが調和することで生まれる美しさもあるだろうとシュウは思った。
極論すれば、どんなポケモンであろうと問題は無いのだ。彼らをどのようにして美しくするか、人々を魅せるか――それが、コーディネーターの務めなのだから。
「せっかく懐いてるみたいだし、連れて行ってあげたらどうだい」
「うーん……」
いつの間にか頭の上に乗っていたキャタピーが膝の上まで降りて来ていた。大きな丸い瞳が2つ、ハルカを見つめる。しばし沈黙が流れたが、それは言葉と同等の重みを持っていた。
「……もう、しょうがないわねー。分かったわ。一緒に行きましょ、キャタピー!」
キャタピーの顔が、花が咲いたかのように明るくなった。
甲高い鳴き声を上げながら、ハルカの胸にすり寄っている。その頭を、ハルカはよしよしと撫でてやった。
そんな1人と1匹を目の当たりにして、シュウは思わず笑みをこぼしていた。この感じには憶えがある以前マボロシ島で、ハルカとソーナノ達が遊んでいたときにもこんな気持ちになった。そう、子供を眺める年長者のような、母子を見つめる父親のような――
(――って、何を考えているんだ僕は)
変な方向に向かいそうになった思考を慌ててかき消した。何かしないと落ち着かなくて、左手を伸ばしてキャタピーの頬をつついてみる。
優しく撫でてやるとキャタピーは気持ち良さそうに鳴いて、シュウの方へと這ってくる。膝の上に留まって寝そべるようにしたキャタピーの頭を、いたわるように撫でた。
それを見ていたハルカも、ふふっと笑った。
「シュウったら、お父さんみたいかも」
「………!!な、何を言うんだい君は」
「ね、シュウのバタフリーも最初はこんな感じだったの?」
「あ、あぁ……そうだね……あ、いや、こんなに人懐っこくはなかったかな……」
「どっちなのよー」
あはは、と笑うハルカに合わせてシュウも力なく笑った。お父さん、という単語が脳裏をぐるぐると回っている。
「はいキャタピー、おかーさんはこっちですよー、なんちゃって」
満面の笑顔でそう言いながら、ハルカはキャタピーを抱き上げた。
「シュウ、どうしたの?」
シュウはというと、両腕に顔をうずめて膝の上に突っ伏していた。
ねぇシュウ?というハルカの不思議そうな問いかけと、キャタピーの楽しそうな鳴き声が頭上を過ぎ去る。
絶対に顔は上げられない。標準装備のはずである余裕の表情を作れる自信など、今は欠片も無かった。
「なんでも、ないよ……」
そう言うのが、精一杯だった。
END
本当は別なネタで書いててボツにしてた下書きが復活しました。なぜかおとーさんとおかーさんネタになりましたww 母の日記念ってことでダメかな……(ぇ
全然悪意ないけど色々言っちゃうハルカにわたわたしてるシュウが大好物です(^q^) ハルカお前ww気づけwww
しかし、すっげー天然なハルカになっちゃったな……。
ハルカもバタフリー持ってシュウとお揃いとかね。そんな方向にしようと思ったけど迷走しましたwwサーセンww
キャタピー可愛いよキャタピー。
タイトルは、シチュ設定が夕方+顔真っ赤にしてるはずのシュウから。
解説が必要なタイトルって……
誰か上手いタイトルを思いつく能力くださいorz
初出 2010.5.12.